調査の概要
★ 幼児や家庭・先生の状況について
 家族構成としては,30歳代の両親と2人の子どもという核家族が多いことが想像できます。半数以上の保護者が子育てに関しての悩みを抱えており,父親より母親が子育てについての役割が多いこともうかがえます。核家族が多いことから,子育てに関しての『孤立化』について周囲の配慮やサポートが必要な場面もあるようです。
 子どもの生活習慣の定着に関しては,多くの項目で良好な結果が出ていますが,好き嫌いに関しては課題があるようです。子どもの成長に大切だといわれている『早寝・早起き・朝ごはん』についてもおおむねよい結果と思われますが,毎日朝食を摂る子どもが8割〜9割にとどまり,朝食を摂らない子どもが少なからずいるという現状については非常に気がかりな点です。
★ 親と先生の見方の比較から
 調査全体を見ると,多くの質問に関して両親に比べて先生の方が『あてはまる』と答える割合が低いという傾向が見られるようですが,『ややあてはまる』までで見るとその差は小さくなります。一見,先生が幼児の育ちを親より厳しく評価しているようにも見えますが,それぞれの役割や立場の違いから評価にも差が出ているのではないでしょうか。
 幼児は成長するに従って,家庭から保育園や幼稚園といった大きな集団へと生活範囲が広がっていきます。家庭は子どもの生活の基盤であり,両親は子どもにとって一番安心できる存在です。ほとんどの子どもは,両親に対して安心して自分を表現することができるでしょう。一方,園においては慣れない大きな集団の中での生活になることから,不安や戸惑いがあったり我慢しなくてはならないことが増えたりと,家庭ではよく出来ていることも園では出来ないといった場合もあるようです。しかし,年齢が進むにつれて集団の生活に慣れて先生の評価もよくなっていき,両親との差が小さくなっていきます。
 幼児に対する意識にも,両親と先生とでは違いがあると思われます。両親は子どもを家族の一員として見ているのに対して,先生は大きな集団の一員として見ていることに加え,異年齢の子どもとの比較もしやすいため,評価の差(特に3歳児については差が大きい)として現れてくるのではないでしょうか。
★ 父親と母親の見方の比較から
 父親の方が母親に比べて厳しい評価をしているような傾向が見られますが,中には父親と母親の評価に差がない項目もあります。子育ての中で,父親・母親がそれぞれが役割をもって分担している場面と,同じような立場で当たる場面とがあるようです。保護者の職業の調査を見ると,フルタイムで働いている母親の割合は保育園で半数弱,幼稚園となるとごくわずかであり,多くの時間を子どもと一緒に過ごしています。一方,仕事の関係上父親は子どもと接する時間がかなり少ないと考えられます。子どもに対するかかわりの調査についても,母親より父親の方がかかわりが少ない傾向が見られます。
 幼児の生活をより多く共有している母親の見方と,一部しか見ていない(あるいは母親から伝え聞く)父親の見方で評価に差が出てくることもあるのではないでしょうか。父親が子育てにかかわる機会は増えてきていると思われますが,まだまだ母親が受け持つ役割が多いことがうかがえます。
 
★ 先生の取り組みについて
 保育園や幼稚園で先生が重点を置いている項目を見ていくと,いくつかの傾向が見えてきます。
 第一に『各年齢に応じた取り組みをしているということ』,第二に『様々な体験をさせる中で,必要な態度や知識を身につけさせようとしていること』,第三として『集団生活を送る上で必要なことを大切にしているということ』があげられるようです。園では,幼児の体力や表現力など様々な資質を伸ばすとともに,集団の一員としての社会性の育成を重視しているようです。
まとめ
 父親・母親・先生が幼児の育ちをどうとらえているか,幼児とどうかかわっているかという点を見ていくと,それぞれの立場の違いや幼児の育ちの様子の一部分が見えてくるようです。
 例えば,『自分から挨拶をする』という項目の評価の差からは,『家族や身近な人とかかわる力』は身についていても,『より多くの人や家族以外の人とかかわる力』はまだ十分ではないことがうかがえます。その力を付けるためには,家庭と園ではそれぞれどのようなことに取り組んでいったらよいのかということを考えていくことが大切ではないでしょうか。
 親としては,『園でどのような目的でどのような取り組みがされているかを知り,どう協同していくか。そのために,園ではどんなアナウンスをしていくのか』。また,園では保育を進める上で,『家庭の様子を理解し取り組みにどう生かしていくのか』という姿勢を,お互いに持てたらよいのではないでしょうか。
 父親・母親の間も同様に,それぞれの役割を尊重した上で協力するとともに,それぞれの役割をきちんと果たすことが大切ではないでしょうか。家庭と園の間,両親の間のコミニュケーションを大切にしていくことで,それぞれのはたらきかけがより効果的に幼児の育ちに結びついていくことになるでしょう。