(4) 手賀沼ビオトープ・自然浄化能力を生かす取り組み


☆  「 伝えよう 手賀沼を 」 第2集 44〜45ページより


               ・ ビオトープとは
               ・ ビオトープによる水の浄化
               ・ 手賀沼ビオトープの区分について
               ・ 手賀沼ビオトープへの市民参加
               ・ ビオトープ内に生息する生物



☆  「 伝えよう 手賀沼を 」 第2集 44〜45ページより


      手賀沼ビオトープ


 手賀沼ビオトープは千葉県土木部がすすめる「手賀沼流域総合浄化計画」のひとつとして行われている事業です。

 手賀沼全体の中で比較的良く自然環境がたもたれている北岸の我孫子市岡発戸(おかぼっと)新田地先の湖岸の堤防と手賀沼の間に平成11年3月に完成しました。手賀沼の水辺環境を改善する取り組みの中で水生植物の持つ浄化能力を利用して、手賀沼の水をきれいにし、いろいろな生物がすめる環境づくりをめざして計画されたものです。

  

 (1) ビオトープとは

 ビオトープという言葉は生物(bio)と場所(top)を合わせたもので「あるまとまりある景観を持つ野性生物の生息する地域」という意味です。いろいろな生物が生育・生息できるように、できるだけ多様な環境をつくりだせるように工夫されています。


 (2) ビオトープによる水の浄化

 手賀沼から取り入れられた水はビオトープ内の植物群落内を順々に通過します。そのときに沼の汚れの原因になっているちっ素やリンなどは、植物の根や茎による吸収や沈でんの作用と、そこにすむ微生物の吸着分解作用により取り除かれていきます。水質が改善された水はまた沼に流れ出ていきます。

 ビオトープの中を沼の水が通ることによって取り除かれる汚れの率はCOD13%、浮遊(ふゆう)物質量30%、チッ素20%、リン31%となっており、水質浄化に役立っていることがわかりました。


 (3) 手賀沼ビオトープの区分について

 手賀沼ビオトープは生物が生きる場としてのはたらきを大事にしながら、人々が水質浄化について学んだり、生物とふれあったりすることなどを考えて整備が行われました。

 広さ約2万平方メートルの手賀沼ビオトープは、大きく3つのゾーン(区域)に分かれています。これらのゾーンの区分は手賀沼からくみ上げられた水の流れの順に「手づくりのゾーン」→「生物を観察するゾーン」→「生物の生息場とするゾーン」になっています。それぞれのゾーンの内容をつぎに説明します。


 A. 手づくりのゾーン

 人が入ることを考えて、人々に使ってもらうようにした区域です。田の畦のように200平方メートルずつ10区画に分け、貸しあたえられた市民のグループがそれぞれの区域でテーマを設け、水生植物などを栽培し管理しています。

 栽培されているものは稲(古代米やコシヒカリ)や、ヨシ・ガマ・マコモなどの現地採集した抽水植物(地下茎が水中にあり葉や茎を水面に出す植物)、そしてハス・クワイ・ガシャモク(水草)、さらに筏の上に植えたタチヤナギ・アカメヤナギといった樹木や、ジュンサイ・クワイ・セリなどです。

 これらの栽培を行うことによって、手賀沼の水質浄化や、かつて沼にたくさん茂っていた水草の再生をめざしたり、育った葉や茎を昔のように農地にもどすことを試みたりするなど、市民の農園として体験活動に生かしています。面積は約2,800平方メートルあります。


 B. 生物を観察するゾーン

 生物の生息に気を配り、人が入ることをできるだけ避け、生物の生息の様子を観察する場です。今あるヨシなどの抽水植物群落を浸透させやすくするため水制(くいと細い木の枝の柵さく)を設置し、水の流れを曲がりくねらせ、深さもいろいろ変化させています。また西の端にあるガシャモク池は、湧き水を水源にして沈水植物(根、茎、葉がすべて水中に沈んで育つ植物)の生育をはかる深い池です。
 
 面積は約7,000平方メートルあります。
  


 C. 生物の生息場とするゾーン

 人が入らないようにして、生物の生息する場としてのはたらきをもたせた場所です。沼にあるヨシなどの抽水植物が生息できるように、水の流れ方や深さを観察ゾーンのように工夫しています。面積は一番広く9,300平方メートルあります。
    


 (4) 手賀沼ビオトープへの市民参加

 手づくりゾーンの運営は我孫子市を中心とする「エコアップ懇談会」によって進められています。市民に貸し出された10区画の土地は無肥料、無農薬、手作業を原則に、体験水田や手賀沼付近に生息する植物の栽培を2年間続けて行い、栽培の報告が行われます。また8月中旬には親子の生物観察会も開かれています。このように市民の参加によって手賀沼への興味を盛り上げ「きたない、汚れている、くさい」という沼のイメージを取り除き、手賀沼の浄化への市民の啓発につなげています。


 (5) ビオトープ内に生息する生物

 植物ではガシャモク池を中心に、保護重要植物とされているガシャモク、シャジクモ、ササバモなど211種、鳥類ではドバト、ツバメ、オオヨシキリなど42種、トンボは4科13種類の止水域に生息するものが確かめられました。また魚類でモツゴ、ギンブナなど、甲殻類はテナガエビ、スジエビなどが生息しています。